2008年1月11日金曜日

ポエムじゃないのよ日記は

明後日に迫った遊佐部関西へ向けて、コード譜を作ろうと、曲を聴きながら流れてくる歌詞を打つということに挑戦してみた。その結果、次のような謎の歌詞がきみの手のひらからこぼれおちたのである。

「ぼくはずっときみについてゆこう 真主税町へと度を津ズ家手」

恐らく真主税町というところがデスティネイションなんだろう。旅人その人が、得体の知れぬカバンの中身をチラ見せしたりするし、シャボン玉の着ぐるみをきて歩きながら夢を見ているその様は、電波以外の何者でもない。
そして北風。これは埼玉県の妻沼という、ネギが特産品の町でよく見る名字だ。定年を迎えて日々を虚しく無為に過ごしていた北風勝利(きたかぜかつとし)は、その年の秋に突如痴呆症を患う。デイケアの車から降りた彼の目に、まさにシャボン玉の着ぐるみが飛び込んできた。北風にとって旅人は、激戦のレイテで生き別れたままの親友、沢木であった。むせるような緑は、死の匂い。息ができずに気が狂い出すような熱を発しているのは、日の光でも人の体でもなく、ただ戦争という現象だった。目に見えるもの全てが、熱に濡れていた。決して忘れることのできない、あの密林の空気の中に、気づくと北風は立っていた。
「沢木、日本に残してきた、君を待つ、子供に会いにゆこう」
北風の老いた身体は、かつての雄々しさとしなやかさを取り戻したように、シャボン玉の着ぐるみから突き出た白タイツの両足を力強く捕まえると脇に差し込み、おもむろに回転し始めた。
「あれは……、スイング、ジャイアントスイングよ!!」
デイケア施設の職員がおののき、叫ぶ。恐怖のパワーを吸収するかのように、北風と旅人の回転速度が上がると、不意に、いくつもの光った何かが回転の外側に勢いよく飛び散った。旅人は、遠心力に頭を吹き飛ばされそうになりながら、なおかつ夢を見ながらも、半開きのカバンを持ち直す。
「不老不死の玉じゃあーーーー」
車いすにのっていた一人の老人が叫び、車いすを捨て地面に這いつくばりながら光るものを拾おうとすると、まわりの老人達も次々に車いすから這い出した。欲のパワーをも吸収し、北風の回転速度が更に上がる。うなりをあげ突風が発生し、老人達の幾人かがむち打ちになったり差し歯を飲み込んだりした。
「世界中の私が、あなたを待ってる」
立っていることさえままならず、空になった車いすにすがってしゃがみこんでいるデイケア施設の職員の叫びも聞き終えないうちに、北風は旅人を連れて、空高く飛び上がった。

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